実家でゆっくりしていたある日、高校の友人からプールで遊ばないかとのメールが届いていたので私は即参加を決めたのですが、ひとつ重要なことを忘れたまま承諾をしてしまったのです。それは、水着がないこと。正確に言うと、遊びに着ていく水着がないということです。
実は大学で友達ができてからプールや海で遊ぶことがあるだろうと思い、洋服やあらかじめ買った日用品と一緒に水着を一人暮らしするアパートに送っていたのです。なので、ゴールデンウィークを過ごすだけの洋服はアパートから持ってきたので何とかなるのですが、実家にある物は冬服と高校で来ていた制服とあまり身につけなくなった下着くらいでした。
後でそのことに気が付き、私は慌てふためきました。今の時期に水着を売っているところなんてないし・・・。う〜ん、と考えながらクローゼットを漁っていると、高校の部活で使っていた競泳用の水着が何着か出てきました。
「う〜ん、これしかないか・・・。」
しばらく懐かしさに浸った後、仕方なしに自分が一番気に入っていた競泳用水着をカバンに突っ込みました。この時はまだ、あんなことが起こるなんて思ってもみませんでした・・・。
そしてプールで遊ぶ日が来ました。プールへ行くシャトルバスが発着する駅で待ち合わせをして、友達の綾香・友美・優華と再会をしました。まだ1か月と少しくらいしか経っていないのに、なぜか友達が懐かしく感じました。
シャトルバスを待っている間やバスに乗ってからは、みんな大学生活がどんな感じなのかをお互いに話しました。オリエンテーションは富士に行っただとか、こんな変わったサークルがあったとか、友達がたくさんできたとか、入学式の翌日に英語のテストがあって大変だったとか、この時だけでも楽しい時間が過ごせました。
楽しく話をしていると、バスでの時間なんてあっという間という感じでした。私たちは足早にバスを降り、受付に行き必要な手続きを済ませると、他の友達はルンルン気分でロッカーに行き、早速着替え始めました。私は水着のこともあり、友達のあとを少し重い足取でついていきました。
かつてバスケ部に所属し部活では常にレギュラーにいたはつらつとした性格の綾香は、綾香らしい紐で結んだ黄色のビキニに着替えているところだった。体型も現役のときとあまり変わっていなかった。プロポーションを保つのに努力を欠かしていないのだろう。どこの部活にも所属はしていなかったが、男子から人気のあった友美は、淡いピンクのタンキニをつけていた。高校の時と相変わらず可愛い格好をしていた。
頭が良くいつも何かと頼りになってる普段はおとなしいがキレると怖い優華は、胸元がみえる大胆な黒のビキニにすでに着替えていて、メガネをはずし洗面台でコンタクトをつけていた。心なしか胸が少し大きくなったように見えた。
「友美、ヘアゴム借りていい?」
「うん、いいよ」
そう言って綾香は長い髪の毛を後ろで一本に束ね、ポニーテールにした。
「あれ?なつみ、はやく着替えなよ。」
そう催促したのはすでに準備万端の優華だった。私はたじろぎながら、恐る恐る自分のバックから水着を取り出した。
「なつみ、それで来たの!?」
「わかってるわよ、こんなところで着るもんじゃないっていうのはさぁ。」
一同が私の水着を見て驚いた。
「ゴーグルやシリコンキャップなんかまで用意しちゃって。バリバリ泳ぐ気満々じゃん。」
綾香がにやにやしながら言った。
「確かここのプールって競泳用のプールもあったわよね。」
優華がフォローのつもりだろうか、そう言った。ここのプールにはウォータースライダーや波のでるプールなどがあるレジャー用のプールと、大会などでも使われる長水路と短水路が備わった競技用のプールがあるのです。
「えー、別に泳ぐ速さを競いにここに来た訳じゃないでしょ?」
すかさず友美が突っ込んだ。
「まぁまぁ、とにかく今日はみんな久々の感動の再会なんだし、楽しくやろうよ。」
「そ、そうだね、そうだよね。水着がなんだ!」
私は優華のフォローに感心しつつ、さっと水着に着替えた。
着替え終えた私たちは、はしゃぎながらプールへと向かいました。ここのプールは去年の夏休み辺りに行ったのですが、ざっと見渡したところ特に変わっているところはなく、またそれが懐かしさを際立出せているようにも感じました。
まず私たちは、水深が浅いプールで遊ぶことにしました。みんな興奮しながら水を掛け合ったり走り回ったりして水遊びをしていました。次に私たちはここのプールでは有名な物のうちの一つである、波がでるプールへと向かいました。波が出るところにはたくさんの人が集まっていました。
「あ、もう波が出てるんじゃない?早く行こうよ。」
綾香が先導してプールに入って行った。それに続いて私たちも入った。私たちをジロジロ見ている視線が気になったが、あえて無視しておいた。
「うわぁ、やっぱり楽しいわぁ。」
波に揺られながら綾香は言った。
「なんかあの時を思い出すわね。」
優華が言った。
「浮き輪もってくればよかったね。」
友美が少し残念そうに言った。
「そうだね。でも、これでも十分楽しいよ。」
私はいつの間にか、みんなの雰囲気を保とうと努力していることに気がついた。
「そろそろお昼食べない?」
そう言いだしたのは優華だった。
「そうだね、私お腹減ってきちゃった。」
「私も。」
友美に続いて綾香が言った。
「わ、私も何か食べたいな。」
少し遅れて私が言った。
「じゃあ、あそこで食べましょう。」
そう言って優華は私たちをひきつれて売店へと向かった。みんなそれぞれ食べたい物を買ったら、近くにある広いテラスで食べることにした。テラスで食べている時も、談笑が絶えることはなかったが、やっぱり、男性の視線が気になった。明らかにこちらを見ているのが分かった。大胆な胸元がセクシーな優華か、それとも少しロリっぽく可愛い友美か、引き締まった体に黄色いビキニが眩しい綾香だろうか。
もしかして、競泳水着の私を見ているのだろうか。そう考えると少し恥ずかしくなり、顔が自然と赤くなっていた。
「なつみ、大丈夫?何か顔が赤いけど。熱でもあるの?」
そう心配してくれたのは優華だった。
「う、ううん。大丈夫よ、大丈夫。」
慌てて私は答えを返した。