黒でぃあす作
「ムフフフ…♪ 買っちゃった買っちゃった♪ 早く帰らないと♪」
僕はヒロト。前々から欲しかったゲームソフトを買って、駆け足で帰っているところ。
「楽しみ楽しみ〜♪ うわっ!」
ズデンッ!
実は昨日、台風だったんだ。台風一過ってこともあって、今日はとってもいい天気。
コンクリートが濡れて、青空が反射してキレイだったから、ついつい上機嫌になっちゃって…
走っていたら足を滑らせて転んじゃったんだ。
でも、実は違ったんだ…
「いったぁ〜… ソフトは?! 大丈夫か…」
ソフトの無事を確認して、立ち上がろうとしたその時…
「んっ? なんだ?」
ぐいっと足を引っ張られてるような感覚がした。何かと思って足の方を見てみると・・・
「…何…? なんだこれっ?」
真っ黒な水溜り?が僕の足を取り巻いていたんだ。なんていうか、ガムがくっついたような。
「な、なんだよー! これー!」
振り払おうと、足を引っ張ってみるが、どうにも取れてくれなそう…ひっぺがそうと必死になってるその時…
「…カラ…ダ…」
「へ?」
どこからとも無く声が聞こえた。と思ったら
「うわーー!? な、なんっ…むぐっ…」
いきなり黒い水溜りが上にぐにょーんって伸びて、僕を包み込んだんだ。
「むぐぐーー! むぐぅ!」
必死にもがいてみたけれど、ちっとも剥がれる気配は無い。
「むぐー… なんなん…あれ?」
少しもがいて諦めかけた所で、その包み込んでいた物がいつの間にかどこかへと消えていたんだ。
「あ、あれ? え〜っと… ん?」
周りを見ても、さっきのゲームソフトが転がってるぐらいで、何も変わったところは無い。
「…何だったんだろ? 今の?」
頭の上にハテナを浮かべつつも、僕は何事もなかったかのように帰路に戻ることにした。
「えいっ! そりゃ!」
僕は、家に帰ると早速ソフトを本体にセットし、電源を入れると、世界に没頭した。
「ふぅ〜… ちょっと休もうっと」
さすがに、アクションゲームを2時間も夢中で遊べば疲れる。
「いや〜、やっぱり期待してた甲斐があったなぁ♪」
僕はリビングでジュースを飲みながら、娯楽の余韻に浸っていた。
「やっぱり、あのトカゲのキャラがいいな♪ 爬虫類大好き♪」
今日、僕が買ったソフトというのは、キャラが全部獣人の2D格闘ゲームだ。狼とか虎とか色々いたけど、ヘビとかトカゲとかの爬虫類が好きな僕はトカゲのキャラを真っ先に選んで練習している。
ジュースを飲み終えたけど、頭の中はまだ余韻に浸っている。
「うーん… えいっ♪」
ちょっと気取って、そのキャラのアクションを少し真似てみた。ところが…
「うおぉ!?」
視界に入った右手が真っ黒になっていた。よく見ると、表面がウロコみたいになっている
「なんだこれ?」
と、思ったとたん、普通のヒトの手に戻ってしまった。
「ひょっとして…」
「うわ〜♪ すごいすごい♪」
僕は鏡の前で自分の姿に見とれていた。真っ黒とはいえ、あのトカゲになっているんだ。
なんでかは知らないけど、ボクがあのトカゲの姿を思い浮かべると、僕がそのトカゲの姿になるんだ。姿が変わるとき、一瞬、自分の体が溶けるような感じになるから、少し気持ち悪いんだけど、一瞬だから気にしない♪
「あ、そうだ。 えいっ!」
ためしに鳥の翼をイメージしてみる。すると右手が鳥の羽みたいになった。
「やっぱり…♪」
当然といえば当然なんだけど、僕がイメージすると、その通りの姿になるみたい。
「でも、なんでだろう?」
何になっても真っ黒な所を見ると、多分、帰る時にあったあの黒い水溜りが原因みたい。
「そういえば、「カラダ」って言ってたような気がしたけど、なんだろう?」
ひとまず元に戻って、またゲームに興じる事にした。
その時は何も気にしてなかったけど、あんなことになるなんて…
続く?
闇
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