光差す場所へ・・・−竜虎の一日−前編その二−暁 紅龍作
『さて……、着いたぞ。』
 仙人がそう言うと牙龍と清虎は顔を見合わせ何か考えているようであった。
『これ、牙龍、清虎。少し後ろに向いてくれるかの?』
「「は、はい!!」」
 急いで後ろを向く。
『このままだと幾ら大きい浴槽でも無理だからのぅ…、ほれっ……!!』
 杖を持ち、仙人が牙龍たちに向かって振りかざすと眩い光が包みこむ。
「うわぁ…!なに…?ご主人さま……!」
 まず牙龍に変化が起こり始める。東洋龍とあって長かった体長もみるみる縮んで行く。丁度人間の子供ぐらいの背丈になると体の収縮も収まり、体を包んでいた光が徐々に消えて行く。
「…うぅ…、う…ん……?!」
 牙龍は自らの体を見回す。するといつも見慣れた長い体はどこにも無く代わりに人間の小学生ぐらいの体があった。しかし、その体は人に似ていて非なる物であった。
 体を覆うのは厚い深緑の鱗、腰からは太く比較的に長い尻尾が生えており、両手足には鋭い爪があり、顔は以前の龍の顔のままであるが、見た目は子供のような童顔である。瞳はくっきりと澄みきっており、どこか優しげであった。頭からは対になっている細い角が見えており、耳も長く尖っている。そう、牙龍は龍人の姿になっていたのであった。
 一方、牙龍と同時に清虎にも変化が起きていた。牙龍と同様に体は徐々に縮んで行き、牙龍よりも背は高めで丁度年頃の女の子の体に腰の辺りからは細い尻尾が見え隠れしている。全身には白虎と同様の白と黒の縞模様の獣毛が生えており、両手足には爪が鋭く生えて、顔は以前の白虎のままでより女性らしい顔つきに、頭には三角形の片耳が少し垂れ耳になっている獣人になっていたのであった。

「これは……、ご主人様……?」
 清虎が仙人に聞いて来る。
『お主らも大きな体は少し不自由かと思ってのう…、これで少しは動きやすくなったのと思うが……。嫌か……?』
「ううん!ご主人さまありがとうございます!!牙龍、すごく気に入ったよ!!」
 牙龍が仙人に大喜びし、跳ね回りながら近寄って来る。
『さて・・、そろそろ湯浴みとするかの・・・。牙龍、清虎や、わしの後について来るのじゃぞ・・・?』
 仙人がそう言うが、姿が変わってはしゃいでしまっている二頭にその声はあまりにも小さいようであった。


 光差す場所へ・・・−竜虎の一日−前編その二− 終

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