お母さんは・・・ お母さんは・・・冬風 狐作
「わかった?慧ちゃん、もうこんなことさせないでね。」
「はい・・・ごめんなさいお母さん。」
「わかってくれたら良いわ・・・さぁ、ご飯にしましょうか。急がないと保育所に遅れちゃうわよ。」

・・・ある所に母子2人暮らしの家があった。父親は息子が生まれるのと前後して他界してしまい、以来母親は父親を一度も見た事の無い息子と共にメリハリのある充実した日々を送っていた・・・あるひとつの点を除いては、そう母親が"魔女"であるという事を除いては・・・

「慧ちゃん・・・全くあなたって子は・・・。」
 あの一件から三週間後、僕は懲りずにまた同じ事をしでかしてしまった。何をしでかしたのかと言うと、それは勿論3週間前と同じ布団をかけずに寝てしまったのである。正確に言えば、寝ている間に体が無意識の内に動いた拍子に、うっかり上布団を跳ね飛ばしたまま、気が付かずに腹を出して寝ていただけなのだったが、お母さんは僕が意図的にやったのだと信じ込んでいる様だ。
「そう言えば慧ちゃん、あなた前にこんな事言ったわね・・・猫とか犬とかにも布団かけろって・・・お母さん憶えているわよ・・・それで猫に変えて戻してあげたのに、またするなんて本当懲りない子ね。」
「そ、そんな事無いよーただ寝ている間に布団が外れたのに気が付かなかっただけだよ。ねぇ、本当なんだよ。」
「言い訳は良いの・・・約束を破ったのは慧ちゃんなんだからねぇ・・・。」
「僕、トイレに行って・・・。」
「待ちなさい、トイレならそこにあるわよ。」
「そこって・・・あれ、ポチのトイレだよ。」
「だから良いのよ、ほら慧ちゃん言ったでしょう。猫とか犬にもって・・・だから・・・。」
「えっ・・・あっちょっと・・・あぁーっ!?」
 目の前でお母さんが軽くあの棒を、魔法の棒を僕の方へ振り下ろしたのが見えた。その途端、急に全身がむず痒くなって、縮んで、服が大きくなって、何かが中へ入って・・・気が付いた時には僕はまた姿を変えられて、服の中から這い出ていた。
「うん、これでよしと・・・ほら、慧ちゃん見て御覧なさい。かわいい子犬になったわね〜。」
とお母さんは手際よく鏡を僕の前に置いた。前動物の本を読んでいた時に、犬は色が見えないと言ったけどお母さんの魔法のせいか、僕ははっきりとした自分の姿を見る事が出来た。
 鏡の中には服を足元に敷いた一匹の白い毛むくじゃらな犬、ほらマルチーズとか何とかって言う小さな犬が、あの円らな瞳を回して映っていたんだ。そして、それは僕自身だとすぐにわかった・・・。
「今日は一日この姿のままでいてね、明日の朝までよ。良いわね?」
「キューン、キューン(困るよ、ごめん戻してよ。)」
「あら、何を言っているのかしら?この可愛い犬の女の子は・・・今日は一日中抱いてあげまるわ〜。」
"本当は犬の言葉が分かるくせに・・・。"
 僕はそう思いながら、メスの室内犬となったその体をお母さんに好きな様に抱かせて上げた。本音を言えばどこかで僕はこうなるのが、人間の男の子から動物の女の子になるあの感覚が好きなのかも知れない・・・でも、これで今日はゲームが出来ないのは残念だった。
 結局その日は一頻りお母さんに抱かれ撫でられた後は、何時もとは違った目で僕を見てくるポチからそっと逃れつつ気ままに一日を過ごして、翌朝元に戻してもらった。恐らく当分はしないと思うけど、また何時かしてしまいそうな気がしてならなかった。


 完
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